研究概要 |
ヒト胎盤EVT(extravillous trophoblast)における糖転移酵素GnT-Vの浸潤関与へのメカニズムを解明するために、絨毛癌細胞株JarにGnT-VのshRNAをstable transfectionし作成したGnT-V発現抑制株を用いた。GnT-V発現抑制により浸潤能および遊走能は促進しており、ZymographyによるMMP-2およびMMP-9の活性には変化は認めなかったが、integrinα5β1の糖鎖修飾が抑制されることにより、フィプロネクチンなどの細胞外基質への接着能が促進していた。そこで、フィブロネクチン添加刺激によるFAK,AKT,ERKのリン酸化の変化を検討した。Jar,mock株,KD株(shRNA導入株)をFCSフリー培養液で培養し、フィブロネクチン(50ng/ml)を添加後、0分、10分、30分後に回収した細胞よりタンパクを抽出し、Western blotを行った。FAKのリン酸化は、KD株ではJarおよびmock株に比べてリン酸化が抑制されていたが、AKTおよびERKのリン酸化には差は認められなかった。また、接着に関与する因子としてpaxillinおよびPY20の発現変化も検討したが、差は認められなかった。妊娠初期胎盤におけるEVTの浸潤制御には、GnT-Vがintegrinα5β1の糖鎖修飾を行うことにより、FAKのリン酸化を介して細胞遊走能を変化させるメカニズムが関与することが示唆された。妊娠高血圧症はEVT浸潤不全が原因と言われているため、妊娠高血圧症患者の胎盤におけるGnT-Vの発現を免疫組織染色にて正常胎盤と比較したが、明らかな変化は認められなかった。
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