体外受精-胚移植周期での採卵時に得られた卵胞液より培養黄体化顆粒膜細胞を分離培養した。各卵胞ごとに卵胞液および培養黄体化顆粒膜細胞を分離培養し保存した。また、培養黄体化顆粒膜細胞それぞれについてタンパクおよびRNAを回収して保存し、PTENおよびアポトーシス関連因子の発現について卵胞ごとの比較検討、得られた卵の質ごとの検討、受精した卵胞と受精不成立卵胞での比較、また妊娠例および非妊娠例との比較検討を、realtime RT-PCRやウェスタンブロッティング法で検討した。また、マイクロアレイを用いて各種遺伝子発現についても比較検討を行った。 培養黄体化顆粒膜細胞にインスリンを添加したところ、濃度依存性にPTEN発現が増加することをrealtime RT-PCRやウェスタンブロッティング法での検討で認めた。次いで、インスリン添加時のシグナル経路についての検討を行い、インスリン添加にPTEN発現が増殖した際に、IGF-1のシグナル伝達経路であるAktリン酸化が抑制されることが確認された。インスリン添加時の培養黄体化顆粒膜細胞に増殖因子であるIGF-1を技与した隙の細胞増殖能についてBrdUアッセイを用いた検討を行った。インスリン添加にてIGF-1投与時のBrdU取り込みは減少し、この取り込みの抑制はPI3Kインヒビターの添加で解除された。MEKインヒビター投与での解除効果はPI3Kインヒビターと比較すると弱いものであった。今回の結果はインスリン抵抗性とヒト顆粒膜細胞増殖についても、PTENを介したPI3K/Akt経路によって調節が行われている可能性を示唆するものである。
|