研究課題
我々は前年度までの研究において、インスリン抵抗性とヒト顆粒膜細胞増殖について、PTENを介したPI3K/Akt経路によって調節が行われている可能性を示唆することを報告してきた。今年度は、基礎的検討として不死化ヒト顆粒膜細胞樹立およびこれを用いたさらなる機能解析などを予定し、臨床応用として、ラットPCOSモデルを用いた検討を計画した。国立がんセンター清野透博士との共同研究により不死化ヒト黄体化/非黄体化顆粒膜細胞樹立に成功した。それぞれの細胞株にフォルスコリンを添加し、培養上清中でのエストラジオールおよびプロゲステロン濃度が有意に増加した。また、LHおよびFSH添加にて、濃度依存性にaromataseのmRNA発現が増加していることをreal time RT-PCRで確認し、新しい顆粒膜細胞株として報告した。細胞株を使用した検討により、さらに詳細な機能解析が可能になる。また、PCOS症例での血清中インスリン濃度と卵胞液中インスリン濃度についても測定を行い、解析を開始した。さらに卵胞液中のプロテオーム解析についても検討を行い、1)同一症例においても妊娠成立胚由来卵胞と非成立胚由来卵胞では検出タンパク数が異なること、2)年齢やPCOSの有無などの患者背景により検出タンパク数に差を認めることを確認し報告した。臨床応用に即した検討項目として予定していた動物実験についてはラットにantiprogestineを投与して作成し、排卵誘発を行うことでコントロール群と比較して過排卵になることを卵巣病理所見で検討し報告した。
すべて 2010
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Gynecological Endocrinology
巻: 26 ページ: 494-9