研究課題
卵巣癌は婦人科悪性腫瘍の中で死亡原因として最も多く、その予後の改善が望まれている。卵巣癌の組織型としては、漿液性腺癌、粘液性腺癌、類内膜腺癌、明細胞腺癌の4組織型が主なものであり、それぞれ臨床的、生物学的に性質が異なる。中でも特に明細胞腺癌は、欧米に比べ、日本人では卵巣癌全体の20%以上と頻度が高く、化学療法剤に抵抗性という特徴を有している。これまで卵巣癌の標準治療法は組織型が異なっても同じであったが、近年、組織型ごとに治療を個別化し、それぞれに最適な治療法を確立することの必要性が認識され、化学療法剤を組み合わせた臨床試験が世界的に行われている。しかし既存の化学療法剤に抵抗性の明細胞腺癌の治療のためには、分子標的治療薬など、新たな薬剤の開発が求められている。本研究における、卵巣癌細胞株および臨床サンプルを用いたマイクロアレイ解析によって、卵巣明細胞腺癌でMAPK活性が亢進していること、および、卵巣明細胞腺癌と腎細胞癌が生物学的に類似していることが明らかになった。そこで、腎細胞癌に有効であるマルチキナーゼ阻害剤sorafenibが卵巣明細胞腺癌に有効であると予測した。ヌードマウスにRMG-2明細胞腺癌細胞株を接種し、sorafenibの抗腫瘍効果を検証したところ、著効を示した。本研究の成果をもとに、京都大学医学部医の倫理委員会の承認を得て、化学療法抵抗性の卵巣明細胞腺癌再発症例に対するsorafenib投与を開始した。本研究によって、卵巣明細胞腺癌に対する治療法が確立することが期待される。
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