研究概要 |
卵巣癌における抗血管新生治療耐性化機構の解明に関する研究を行うにあたり、まず卵巣癌における抗血管新生阻害治療の有用性とその限界について検討することとした。 平成21年度は本邦の上皮性卵巣癌の中で二番目に高頻度な組織型である卵巣明細胞腺癌におけるVEGFの発現頻度、予後との関係、またVEGFをターゲットとした分子標的治療の可能性を検討した。その結果、1VEGFはヒト卵巣明細胞腺癌において高頻度に活性化し予後と相関すること、2抗VEGF抗体であるBevacizumabが卵巣明細胞腺癌の増殖を有意に抑制すること、を見出し報告した(Mabuchi S, et al.Mol Cancer Ther.2011)。また、漿液性腺癌や明細胞腺癌のマウスモデルに対して長期に渡ってBevacizumabを継続投与することにより、Bevacizumab耐性化機構の解明に必要なマウスモデルを確立することができた。 平成22年度は、このマウスモデルを用いてBevacizumab耐性化機構の解明とその克服を目標とした研究を行った。マウスに皮下移植した卵巣癌(明細胞腺癌および漿液性腺癌)にBevacizumabを継続投与しBevacizumab耐性卵巣癌を作成。Bevacizumabが増殖抑制効果を示していた時期の皮下腫瘍(Bevacizumab感受性癌)とBevacizumab耐性癌を免疫組織染色法によって比較検討し、Bevacizumab耐性化に関与する因子の同定を試みた。これまでの研究によって、Bevacizumab耐性癌において細胞内シグナルmTORが強く活性化していることが確認できた。この結果を受け、我々は、mTORの活性化が卵巣癌におけるBevacizumab耐性に関与している可能性があると考え、1mTORを阻害する事によってBebacizumab耐性化の解除が可能となる、2mTOR阻害剤はBevacizumab耐性癌に対する治療薬として有効である、との仮説をたて、マウスモデルを用いた研究を行った。上記1,2の仮説のうち、2の内容をマウスモデルによって証明する事ができた。
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