子宮内膜では、卵巣からの性ステロイドホルモンの影響下に、サイトカインやプロスタグランディンなど様々な生理活性物質が産生され、着床や月経などの現象に関与している。我々は、特にプロスタグランディン合成酵素のcyclooxygenase-2(COX-2)とミトコンドリアに存在する活性酸素消去酵素であるmanganese superoxide dismutase (Mn-SOD)に注目し、子宮内膜でおこっている生理現象を解明すべく研究している。その中で、ヒト子宮内膜間質細胞において、TNF-αによるCOX-2mRNAの誘導はプロゲステロンにより抑制されるが、Mn-SOD mRNAの誘導はプロゲステロンにより抑制されないという結果を見出している。すなわち子宮内膜間質細胞では、プロゲステロンによる遺伝子特異的な調節機構が存在するのである。プロゲステロンは、その受容体(progesterone receptor ; PR)と結合することにより作用を示し、またPRには核内PRと膜型PRが存在することが知られている。前年度の研究において、ヒト子宮内膜間質細胞におけるCOX-2発現は6時間培養後に抑制が認められたことからプロゲステロンの作用はclassical pathwayである核内PRを介している可能性がある。そこで、プロゲステロンの遺伝子発現抑制効果がPRを介しているかどうか調べるため、核内PRに対するsi-RNAを作成しLipofection法にて細胞内に導入した後、TNF-α(1ng/ml)刺激下でMPA(10-6mol/l)を添加し6時間培養後回収し、PR siRNA導入細胞におけるCOX-2発現をReal time PCR法にて検討した。PR siRNA導入細胞においてCOX-2発現はTNF-α刺激にて有意に増加したがMPAを同時に添加しても有意な発現の低下を認めなかった。 以上の結果より、ヒト子宮内膜間質細胞におけるCOX-2発現に対するプロゲステロンによる遺伝子発現抑制効果は核内PRを介していることが明らかとなった。
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