Fbxw7は近年、種々のがんで変異が報告され注目されつつある分子である。本研究では、この細胞周期を制御するがん抑制遺伝子Fbxw7の子宮平滑筋、および子宮肉腫における発現について解析を行った。Fbxw7の3つのアイソフォーム(α、β、γ)のうち、γは筋組織特異的な発現を示し、子宮平滑筋の増殖、分化への関与が期待されたが、本研究により実際には子宮平滑筋での発現はなく、αアイソフォームの機能が子宮平滑筋で重要であることが示唆された。 また、婦人科腫瘍で大きな死因となっている卵巣癌におけるFbxw7の発現解析を行い、良性卵巣腫瘍、境界悪性腫瘍に比べてFbxw7の発現が低く抑えられていること、卵巣癌の中でも進行期が進むとFbxw7の発現が低下することを明らかにした。この結果から、卵巣悪性腫瘍の形質獲得とその進展にFbxw7の発現を抑制する機構が関わっている可能性が示唆された。 さらに、子宮におけるFbxw7の生理学的役割を解析する目的で、子宮特異的なFbxw7ノックアウトマウスを作製した。当該年度においては、Fbxw7コンディショナルノックアウトマウスを交配して増やし、子宮特異的に遺伝子をノックアウトするため、Cre recombinaseを発現するアデノウイルスを作製し、このウイルスが機能することを培養細胞で確認した。ノックアウトマウスの解析に関しては、当初の予定通り、平成22年度に行う予定である。
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