研究概要 |
1) 絨毛性疾患における続発症発症の予後調査と、続発症のリスク因子を抽出 本邦の多施設より提供された嚢胞化絨毛様組織296例よりDNAを抽出し、マイクロサテライトマーカーを用いたDNA診断により全奇胎(1精子受精/2精子受精雄核発生)、部分奇胎(3倍体)、水腫化流産(正常2倍体)の3群に選別した。絨毛性疾患症例のサンプルを提供して頂いた約100施設から、その後の続発症発生の有無について予後調査を行った。その結果、続発症を認めた症例はすべてDNA診断で全奇胎(雄核発生)であり、部分奇胎(三倍体)と診断された症例からの続発症は認めなかった。全奇胎(雄核発生)の症例でも、水腫化絨毛の短径が2mm未満の初期の物は続発症を認めなかった。水腫化絨毛の短径が2mm以上の全奇胎は、短径が2mm未満の初期の物のと比べ、続発症の頻度が有意に高かった。以上の結果から、DNA診断で三倍体と診断された症例および水腫化絨毛の短径が2mm未満の全奇胎症例からの続発症発症のリスクは極めて低い事を明らかにした。 その成果は、2009年11月の日本絨毛性疾患研究会(2009年11月日~日、於:東京ミッドタウン)ワークショップ1妊娠早期胞状奇胎診断の問題点において、「胞状奇胎のDNA診断と、続発症のリスク」の演題名で発表した。また、同内容を英語論文として執筆し、「Incidence of postmolar gestational trophoblastic disease in androgenetic moles and the morphological features associated with low risk, postmolar gestational trophoblastic disease.」の論文名で、現在、Cancer Science誌に投稿中である。 また、今回の成果の一部とそれに関連する内容を日本医師会雑誌138巻特別号に発表した。 2) 胞状奇胎の診断に有用な免疫組織化学的マーカーの同定 本邦の多施設より提供された嚢胞化絨毛様組織のホルマリン固定パラフィンブロックより、標本を作製し現在診断に有益なマーカーについて検索中。
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