ヒト月経血(月経1日目~2日目)より回収した子宮内膜細胞を5日間培養した後、hEMと同様の方法を用いてSP細胞の存在比率を検討したところ、およそ2%前後のSP細胞が存在していることが明らかとなった。このようにして回収したSP細胞と非SP細胞を用いてコロニーフォーメーションアッセイを行ったところ、非SP細胞では20日間培養後もほとんどコロニー形成を認めなかったが、SP細胞では効率よくコロニーを形成した。以上の結果よりヒト月経血より回収したSP細胞は非SP細胞と比べて自己複製能の高い細胞集団であることが明らかとなった。さらに高効率でSP細胞を回収可能な培養条件の検討を進めたが、現状では2%前後の回収率に止まっており以後の遺伝子導入実験を開始するには至っていない。今後本研究を推進するための課題として、SP細胞維持に関わる因子や至適なマーカー分子の同定が、きわめて重要であり、その探索を進めているところである。 以前の研究でhEMのSP細胞/non-SP細胞のマイクロアレイ解析で両者の遺伝子発現プロファイルを検討したところ、SP細胞においてIL-1R(interleukin-1 receptor)、SDF-1の発現が高いことが明らかになった。われわれはこれらの発現が上昇している分子がSP細胞内に存在する子宮内膜幹細胞のマーカーとなる可能性があると考えた。そこでhEMのSP細胞におけるIL-1R、SDF-1のレセプターであるCXCR4の発現を確認するために免疫染色を行い検討した。SP細胞においてIL-1R、CXCR4を発現する細胞はわずかに認められるが、non-SP細胞においては認められなかった。上記のSP細胞の回収率から考えてSP細胞内にIL-1R、CXCR4を発現する細胞がわずかにしか存在しないというのは妥当と思われるが、これらの分子を発現する細胞が本当に多分化能を有するのかということが今後の課題である。
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