研究概要 |
難治性習慣性流産をおこす母親とその両親の6家系について末梢血白血球より抽出したDNAを対象として、Affymetrix社Genome-Wide Human SNP 6.0アレイを用いて(平均プローブ間距離約3kb)ゲノムコピー数を解析した。得られたデータのうち疾患とは関連性がなく、正常人でコピー数変化が報告されている既知のコピー数多型を除外し,かつde novoのコピー数変化または父由来のコピー数変化に限定して候補領域を検索するとのべ49箇所検出した。父由来のコピー数変化を解析対象とした理由は,男性の場合には何ら問題ないが,女性でこれを受け継いだ場合にコピー数変化が原因で妊娠継続が困難になる可能性を考慮する必要があるからである。さらに遺伝子機能等が個体発生に関連する可能性があるとされる6箇所に限定された。この6箇所についてアレイで検出されたコピー数変化領域が擬陽性ではなく,真のコピー数変化であることを検証するためにリアルタイムPCRを実施した。リアルタイムPCRはアレイで検出した欠失・重複領域内にプライマーを2箇所デザインしてその両方でアレイのコピー数変化と一致したものを真のコピー数変化とする。その結果6箇所中2箇所について真のコピー数変化と確認した。ひとつは家系3で検出した8p23.1上における47kbのコピー数減少だが,この領域は複数の論文でCopy Number Variation領域と報告があり,難治性習慣流産とは関係がないと我々は判断した。 またもうひとつは家系6で検出した4q22.2上における100kbのコピー数減少で,この領域にはglutamate receptor delta-2(GRID2)という遺伝子が位置していた。この遺伝子は興奮性神経伝達に関与しているものの,発生には関与しておらず,この領域のコピー数減少についても難治性習慣流産とは関係がないと我々は結論づけた。
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