研究概要 |
最近、IL-17を産生するTh17細胞が多くの自己免疫疾患の病因・病態に深く関与することが明らかにされている。SLEの患者群においては血清中のIL-23、IL-17の上昇、および末梢血中のTh17細胞の頻度の上昇が認められており、同様の病態を示すAPSにおいてもTh17応答の関与が強く示唆されている。さらに最近、Th17応答はがんの進行にも関与することが報告されている。我々は、ヒトNKT細胞と樹状細胞(DC)の相互作用によりTh応答が制御されうることを最近明らかにした。本研究は、自己免疫疾患、および癌の進行に深く関与するTh17応答が、NKT細胞とDCの相互作用によって制御されるメカニズムを明らかにする。また、免疫制御効果を発揮しうる重要な分子を同定し、これら機能的分子をターゲットとすることでAPSなど流産を引き起こす自己免疫疾患あるいはがんを人為的に制御するための分子基盤を構築することを目的とした。 本研究により、NKT細胞はDCにおけるIL-12p70/23産生バランスを制御し、IL-12p70によって誘導される細胞性免疫応答を促進すること、IL-23によって誘導される炎症性応答を抑制することが明らかとなった。さらにIL-23産生を抑制することで、メモリーTh細胞から産生されるIL-17を抑制することが明らかとなった。これらの制御には、NKT細胞由来のThサイトカインが重要な役割を演じており、NKT細胞由来のIFN-γ, IL-4,IL-13は相互相乗効果を示して、DCにおけるIL-12p70産生を増大させた。一方、NKT細胞由来のIL-4とIL-10はIL-23産生に対して抑制的に作用した。これらは、IL-23/Th17経路によって誘導されるAPSやがんの炎症性病態が、NKT-DCの相互作用によって制御されうることを示す重要な観察である。
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