研究課題
HIV垂直感染率は、無治療妊婦の場合20-30%程度といわれているが、我が国では、抗ウイルス薬の投与、選択的帝王切開、断乳(人工栄養使用)により、1%程度にまで抑制されているものの、完全には予防できておらず、特に経胎盤感染はそのメカニズムに不明の点が多い。胎盤絨毛を形成する栄養膜細胞(Trophoblast)は、通常のHIV感染においてレセプターとなるCD4分子をほとんど発現しておらず、HIV垂直感染においては、一般的な末梢血由来リンパ球とは異なったCD4非依存性の感染メカニズムが存在すると考えられる。本研究で使用したTrophoblast細胞株Sw71において、CD4分子はほとんど発現が認められないものの、グラム陰性菌の細胞壁構成成分LPSのレセプターTLR4及びHIV感染の際のco-receptorであるCXCR4、CCR5のmRNA発現が認められた。In vitroのHIV感染実験により、Sw71においては、末梢血単核細胞と比較して極めて低いものの、cell-freeのHIV感染によるウイルスの複製が認められた。また、Sw71細胞をE.coli由来LPSであらかじめ処理することにより、HIV感染後の培養上清中のHIVgag p24量が、LPS非処理群と比較して増加した。このことは、グラム陰性菌が起因の一つである絨毛羊膜炎や細菌性膣症などの合併症が、HIV垂直感染のリスクを高めるという報告とも合致し、今後、詳細な検討が必要とされる。一方、LPS処理によって,Sw71細胞からTNF-αのわずかな産生が認められたが、HIV感染、複製との関連は現時点では不明であり、今後、他のサイトカインとあわせて検討する。
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American Journal of Reproductive Immunology 2010.3.20accepted
ページ: 未掲載
Journal of Tropical Pediatrics Vol.55
ページ: 399-401
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