研究課題
着床前期胚発生は、受精、胚性ゲノム活性化、コンパクション、胚盤胞腔の形成、内細胞塊と栄養外胚葉への分化および分化全能性の獲得など、生殖生物学及び再生医学において極めて重要な事象を含む。本研究では、着床前期胚に特異的に発現する新規遺伝子Hmgpに注目し、詳細な発現解析を行った。これまでに、胚盤胞において細胞質から核内へとHmgpタンパクが移行することも明らかとなっている。今回RNA干渉法を用いて、Hmgpによる着床前期および周辺期発生の制御メカニズムを明らかにすることを目的とした。siRNAによりHmgpの発現をノックダウンした結果、69.2%しか胚盤胞に発生せず、着床率は25.4%、outgrowth発育率は19.0%だった(コントロール注入群:95.3%、75.0%、91.8%)。胚盤胞における免疫染色の結果、内細胞塊のマーカーであるNanogの発現が低下する一方、栄養外胚葉のマーカーであるCdx2の発現も低下した。outgrowthでは内細胞塊および栄養外胚葉に由来する細胞のBrdUの取り込みがいずれも低下し、細胞増殖抑制が認められた。アポトーシスのシグナル伝達経路を構成するCaspase3の発現は胚盤胞およびoutgrowthのいずれにおいても検出されなかった。従って、Hmgpは着床周辺期の胚発生および胚外発生のいずれにも重要な役割を果たすことが示された。HMGタンパクは分泌されてサイトカインとして働くことが知られている。そこで、ES細胞の培養上清もしくは着床前期胚の培養上清中へのHmgpタンパクの分泌の有無を解析し、Hmgpのさらなる機能解明に努めたい。着床前期胚の研究を通して不妊症の病因メカニズムを分子レベルで解明し、生殖医療の向上に寄与したい。
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