研究課題
頭頸部癌は咽頭・喉頭等に発生し、生命予後とQOLの観点から克服が急務である。頭頸部癌の浸潤・転移には上皮-間葉転換(EMT)という過程が必須である。EMTでは癌細胞表面分子の変化が起こるが、この過程は細胞内輸送系によって制御されている可能性が高い。そこで本研究では細胞内小胞輸送系、特にHrsやVps4等から構成されるESCRT系を介した悪性形質制御を解析した。1.誘導性癌細胞を用いたin vitro悪性化解析ESCRT小胞輸送系の役割を解析するため、ドキシサイクリン誘導系癌細胞株を樹立し、輸送系異常による悪性化を検証した。まず、一般的細胞株として知られているMCF7を対象としてESCRT系を阻害する実験系を構築した。レトロウイルスベクター(pRetroX)によって不活型Vps4Bをドキシサイクリン依存性に発現する細胞株の樹立に成功した。これらの細胞株を用いて増殖能を調べたところ明らかな差異はなかった。そこでEMT、形態変化、運動性の亢進、の変化を検討した。EMTに関する遺伝子としてtwist1,snail,slugのmRNAを検討したが有意な差はなかった。2.ドキシサイクリン誘導性癌細胞を用いた悪性化解析次いで、ヒト頭頸部癌細胞FaDuを用いて、ESCRT輸送系タンパク質Hrsをノックダウンした細胞(FaDu-HrsRNAi)、およびVps4Bを発現する細胞株(FaDu-Vps4Bdn)を作成した。これらの細胞はいずれも細胞増殖に変化がなかった。一方、細胞形態はやや紡錘形を帯びていた。EMT誘導を疑い、関連分子のmRNA量を定量したが大きな差異はなかった。一方、NOGマウスに移植するといずれの細胞も造腫瘍能が変化した。以上の結果から、頭頸部癌ではEMTとは異なる機序によりにESCRTによる腫瘍増殖制御がなされている可能性が示唆された。
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頭頸部癌
巻: 37(1) ページ: 153-157