EGFRvIIIは頭頸部癌細胞の増殖、腫瘍増大ならびに薬物耐性などを促進することが知られているが、その詳細な生理学的機能およびこれら癌進展を引き起こす機序、特にシグナル伝達経路・標的分子についてはその重要性が注目されているもののいまだ明らかとされていない。今回の研究では、頭頸部癌においてEGFRvIIIにより誘導される悪性現象および活性化されるシグナル伝達経路や標的分子を明らかとし、これらが頭頸部癌治療の重要な標的となりうることを検証することを目的として行われた。平成21年度はこれまでEGFRvIIIを発現する頭頸部扁平上皮癌細胞を用いて行われた研究をまとめ、これを第33回頭頸部癌学会にて発表。その後頭頸部癌細胞においてEGFRおよびEGFRvIIIに関連する因子の検討を計画したところ、細胞膜表面に存在するEMMPRIN(CD147)が頭頸部扁平上皮癌の進展に深く関与することが報じられており、頭頸部扁平上皮癌細胞株2株を用いてこのEMMPRINの頭頸部扁平上皮癌細胞での役割の検討を行った。この結果、EMMPRINの刺激因子であるCypAにより、その増殖能、抗癌剤への抵抗性が増強することが明らかとなった。これは今後のEGFRおよびEGFRvIIIの頭頸部扁平上皮癌の作用機序の解明にあたり重要なステップとなる。
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