鼓室形成術や乳突削開術後の側頭骨欠損部の再建に対して、以前より軟骨、筋膜、骨片、骨パテ等が再建材料として用いられてきた。しかしそれぞれ問題点があり、現在側頭骨における骨再建法は確立されていない。またこれらの再建法では、骨組織の骨化、吸収というリモデリング能を有する生理的な正常骨にはらない。そのため現在組織工学的手法を用いた骨組織の再建が注目されてきている。生理的な骨形成を期待できるものとして、骨形成蛋白:BMP (Bone morphogenetic protein)、多血小板由来成長因子:PDGF (Platelet-Derived Growth Factor)、βリン酸三カルシウム:β-TCP (β-Tricalcium Phosphate)が注目されている。22年度は、これらの骨形成因子を用い実験した。実験方法は、モルモットに対し側頭骨に一定の削開孔を作成し、担体に投与薬物を浸透させこれを埋め込み閉創する。処置一定期間後マイクロCTにて評価する。結果は、コントロールとPDGF投与のものは処置後2週間で削開後処置部に骨再生を認めなかった。β-TCP投与後2週間では、β-TCP自体にカルシウムを含有しているので削開後処置部にβ-TCP顆粒認めるが、骨組織の再生は認めなかった。一方BMP投与したものでは、処置後1週間で削開後処置部にわずかに骨組織の再生認め、2週間では削開後処置部に高度に骨組織の再生を認めた。以前の実験では動物の側頭骨を摘出し検討したので、個体間誤差や実験間誤差が生じた。今回マイクロCTを用いて測定し、骨形成因子投与による骨再生過程を同一個体で経時的に観察が可能となり、マイクロCTは極めて有効であることが確認できた。また、3種類の骨形成因子中で、側頭骨に担体に浸透させる今回の方法ではPDGF、β-TCPに比較しBMPが最も骨再生能が高いと結論づけた。
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