研究概要 |
内容 平成21年度に施行した頭頸部癌患者11名の頸部郭清外科手術例に対して34個の頸部脂肪組織を採取した。肉眼的にリンパ節と確認できる約2mm径以上のリンパ節はすべて転移診断のため院内の病理検査に提出される。残った組織が検討対象とする頸部脂肪組織となる。ホルマリン固定→パラフィン包埋ブロック作成→各種免疫染色→標本作製を行い、HE染色および以下のリンパ節転移に関連のある免疫組織化学染色にて検討した。用いたサイトカインは血管増生因子の仲間でリンパ管増殖因子であるVEGF-C, VEGF-D,そしてそのレセプターであるVEGFR3、また正常のリンパ管同定にもちいられているD2-40について検討する。 意義 現在、癌のリンパ節転移に関する機序については原発巣における既出のサイトカインによる検討がなされている。しかい本来の癌の移動経路である原発部位からどのように癌細胞が移動するのかを確認するためには原発巣、リンパ節転移巣を連絡する脂肪組織に代表される間質を検索する必要があると考えた。昨年までの検討では、新しいリンパ球の集まり、リンパ球様細胞集簇が脂肪細胞の間に認められていることを確認した。国内の研究グループによる同様な細胞集団に注目し報告された内容を踏まえ、これらの細胞を脂肪関連リンパ球集積:FALC (Fat Associated Lymphoid Cluster)と再定義し、本細胞集団についての働きを確認していくことの意義は、今後の研究に与える影響は少なくないと考えられた。 重要性 FALCはリンパ球様の細胞でありどのような働きがあるのか何も分かっていない。しかし頭頸部癌患者の頸部脂肪組織内での検討で、術前に放射線既治療施行例では有意に少なくいことがわかった。またリンパ節転移、遠隔転移が認められる症例ではその細胞集団数が多く存在していることが確認された。リンパ節転移、腫瘍増殖に関連した興味深い存在であることが示唆され今後、さらなる検討に期待を抱かざるを得ない結果となった。
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