東京大学耳鼻咽喉科の頭頸部腫瘍患者より、70症例が集積され、50症例ほどが解析された。その中で頭頚部扁平上皮癌を対象に遺伝子解析を行った。TP53、EGFR、K-ras、ALKのDNA変異はPCR直接塩基配列決定法にて検索した。対象exonはTP53がexon5-9、EGFRがexon18-21、K-rasがexon1-2、ALKがexon20-25であり、各遺伝子のこれまでの報告における変異のhot spotを含む。EGFR variant type IIIとEML4-ALKfusion geneの検出はcDNAを鋳型とするRT-PCR法にて行った。これまでのところEGFR、ALK、の遺伝子変異は認められなかった。Krasの変異は2例に認め、分子標的薬であるcetuximabの治療が今後本邦頭頸部扁平上皮癌で導入された際に、治療抵抗性との関連性を調べる上で、Kras変異も解析の必要性がある重要な因子と考えられた。TP53の変異は45%に認めた。変異スペクトラムはナンセンス変異が40%と有意に多い結果となり、日本人頭頸部扁平上皮癌特有の因子の可能性が考えられた。頭頸部扁平上皮癌ではこれらナンセンス変異を含めたnull type変異に対して、今後予後因子として注意する必要性が考えられる。この点について、学会発表と和文論文による投稿を行い、採択された(in press)。EGFR variant type IIIとEML4-ALKfusion geneの検出はこれまでのところ認められていない。
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