研究概要 |
舌癌43症例の原発巣および頸部転移巣のパラフィン包埋切片を用いて、免疫染色法を用いて舌癌の癌幹細胞マーカーとして報告されているCD44,CD133,ABCG2,CD117などの発現の有無につき検討を行った。初診時より頸部転移を持つ例とそうでない例、初診時に頸部転移がなかった例で後に頸部転移が起こった症例に分けて検討を行った。 CD44の発現は原発巣で強く病期によって発現に差異が起こることはなかった。また頸部転移リンパ節内にもCD44の発現が認められ、CD44を発現している癌細胞が直接頸部リンパ節へ移動していることが示唆された。また後発頸部リンパ節にも強くCD44が発現しており頸部リンパ節転移において重要な働きをしていることが示唆された。 薬剤トランスポーターであるABCG2は同様に舌癌癌幹細胞のマーカーの候補として報告されている。ABCG2は原発巣および頸部リンパ節に発現を認め病期およびT分類が進むにつれ有意に発現が上昇する傾向を認めた。 グリオーマなどの癌幹細胞のマーカーとして報告されているCD133についても検討を行った。舌癌においては諸家の報告と異なり原発巣においても頸部リンパ節転移巣においてもCD133の有意な発現は認めることはなかった。 最後に、ヌードマウス内にOSC19の移植によって移植されたSP細胞および非SP細胞によって形成された頸部リンパ節および原発巣を摘出しRNAを抽出した。RNA抽出後、上記の癌幹細胞マーカーをリアルタイム定量PCR法にて検討したところ、SP細胞の移植によって形成された原発巣および頸部リンパ節では非SP細胞から形成された原発巣および頸部転移巣よりもABCG2,CD44が強い発現を認めることが判明した。以上の結果からCD44およびABCG2が舌癌の癌幹細胞のマーカーの一つとして考えられた。
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