B3-H7はB7 familyに属するTリンパ球活性化に関わる共刺激因子の一つであり、乳癌や膵癌、胃癌など様々な腫瘍細胞に発現していることが報告されていて、その機能に関してはcostimulationとcoinhibitionの両方を持ち合わせており、依然不明な部分が多い。先行研究で我々は2種類の頭頸部扁平上皮癌細胞株であるGun-1、Ca9-22についてフローサイトメトリーを用いてB7 family分子の発現を調べたがGun-1ではB7-H1分子発現を認めるもののB7-H3分子の発現を認めなかった。しかしながらCa9-22ではB7.2とB7-H1発現に加えてB7-H3も弱いながら発現を確認できた。頭頸部癌幹細胞として位置付けられているCD44+細胞では細胞増殖能、抗癌剤耐性、免疫抑制能、アポトーシス抵抗性などの治療抵抗性および浸潤・転移能が高いことが確認されている。特に浸潤・転移能は上皮間葉転換(EMT)が起こることで獲得すると言われており、TGFβが誘導因子として挙げられる。 我々はCa9-22細胞由来CD44+癌幹細胞におけるB7-H3発現がCD44-細胞に比べてやや多いことを確認している。さらにCD44分子は選択的スプライシングを受けてstandard formとvariant formのどちらかとなることが分かっており、EMT誘導されるとvariant formが減少してくる。Ca9-22の検討ではCD44はvariant formの発現が優位であり、TGFβの産生がほとんどなかった。口腔粘膜間葉系幹細胞でのB7-H3発現が高値で制御性T細胞の増員に寄与するという報告もあるが、今回Ca9-22由来CD44+細胞におけるB7-H3発現が弱い事は確認できたが、ヒト腫瘍組織標本での発現を確認するまでには至らなかった。しかしながら頭頸部癌におけるB7-H3とリンパ組織での制御性T細胞の誘導との関連性が示唆される結果となったため有益な知見となったと思われる。
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