Myeloid-derived suppressor cells : MDSCは細菌・寄生虫感染、急性・慢性炎症、外傷性ストレスなどにおいて免疫寛容を誘導する細胞として報告されている。癌においてもMDSCは癌細胞および他の間質細胞と相互に関係しながら癌の免疫監視機構逃避のメカニズムの一翼を担っているとされている。このMDSCは顆粒球、樹状細胞、マクロファージ、前骨髄芽球などの前駆細胞であり、分化度も様々な非常に多様な細胞集団であり、その単独マーカーはまだ同定されていない。癌細胞のMDSC細胞誘導に及ぼす影響を明らかにするために今回はLin-HLA-DR-CD33+の細胞集団について検討した。頭頸部扁平上皮癌細胞株を用いて、末梢血単核球とTranswell chamber下に混合培養したところ癌細胞の存在下では有意にMDSC細胞の比率が増加しており、癌細胞からの液性因子などがMDSC誘導に関与していることが示唆された。 さらに近年、癌細胞のなかに少数の癌幹細胞が存在することが明らかにされており、頭頸部扁平上皮癌においてはCD44分子が癌幹細胞のマーカーの一つとして同定されている。そのため癌細胞株よりCD44+細胞とCD44-細胞をそれぞれ分離しMDSCの誘導能に差があるか否かについて検討したところ、CD44+細胞の方がCD44-細胞に比較して有意にMDSC細胞を誘導することができた。癌細胞は、腫瘍微小環境下において有意にMDSCを誘導するが、癌細胞の違いによってもその誘導能に差があることが示唆された。 これまでに、MDSCからのTGF-βやIL-10などのサイトカインやArginase activityがその抑制機構に関与していると言われている。実際の癌組織にはこのようなMDSCがどのくらい存在しており、T細胞をはじめとする免疫担当細胞に対してどのような影響を及ぼしているのかを手術試料を用いて解析を進めている。
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