研究概要 |
Myeloid-derived suppressor cells : MDSCは免疫寛容を誘導する細胞として報告されており、制御性T細胞とともに癌患者における免疫抑制機構を担う重要な細胞として認識されている。今回は、単球系MDSCのsubsetの一つとして最近報告されているCD14+HLA-DR-細胞に焦点を絞って研究を進めた。34名の頭頸部扁平上皮癌患者の末梢血から単核球を分離しCD14+HLA-DR-細胞の比率を調べた。同時に、もう1つの免疫抑制細胞である制御性T細胞の比率も調べ、両者の間に関連がないかどうか解析した。癌患者では、健常人に比べてCD14+HLA-DR-細胞の比率は上昇していた。これは制御性T細胞も同様であった。興味深いことに、CD14+HLA-DR-細胞と制御性T細胞の比率との間には逆相関を認めた。これらの結果から、癌患者においては二つの免疫抑制担当細胞が重要な働きをしているが、この両者はお互いにバランスをとって免疫抑制を維持していることが示唆された。更に、CD14+HLA-DR-細胞上の共刺激分子の発現を調べたところCD86,B7-H1分子の発現を認め、この発現はCD14+HLA-DR+細胞に比較して有意に増強していた。 次に、末梢血単核球からマグネットビーズにてCD14+HLA-DR-細胞を分離し、この細胞のT細胞増殖能に対する抑制効果を検討した。CD14+HLA-DR-細胞は、CD14+HLA-DR+細胞よりT細胞増殖能を強く抑制した。さらに、CD14+HLA-DR-細胞はCD14+HLA-DR+細胞に比較して、有意なTGF-β産生、Arg I遺伝子発現を認め、これらがCD14+HLA-DR-細胞の免疫抑制機構を担っていることが確認できた。
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