Myeloid-derived suppressor cells : MDSCは制御性T細胞と並び免疫寛容を誘導する細胞としていくつかの論文で報告されており、様々な癌患者の末梢血や癌組織での存在が確認されている。我々の行った研究で頭頸部扁平上皮癌患者の末梢血において単球系MDSCのsubsetのひとつであるCD14+HLA-DR-細胞の比率が健常人に比べて増加していた。また同時に調べた制御性T細胞の比率も頭頸部扁平上皮癌患者の末梢血において増加していた。興味深いことに、CD14+HLA-DR細胞と制御性T細胞の比率の間に逆相関を認め、このことは免疫抑制状態でも一種のhomeostasisが存在を示唆する。また癌局所においてCD14+細胞とCD14+HLA-DR-細胞の比率には相関関係を認めた。末梢血においてはこのような相関は認めておらず、癌局所におけるMDSCの集積あるいは増殖が示唆された。ソーティングしたCD14+HLA-DR-細胞は抗CD3抗体および抗CD28抗体で刺激したTリンパ球の増殖能とIFN-γ産生を効率的に抑制した。これらから頭頸部扁平上皮癌患者においてもCD14+HLA-DR-細胞により免疫寛容状態が誘導されていることが示唆された。さらにCD14+HLA-DR-細胞はCD14+HLA-DR+細胞に比してB7 family ligandであるCD86やPD-L1の発現が多く、TGFβ産生が多かったことも確認できている。さらにCD86、PD-L1の抗体によるブロック、およびTGFβを中和抗体で抑制することでT細胞増殖能抑制効果がなくなり、IFNγ産生が増加する結果となった。今回の研究結果から頭頸部扁平上皮癌患者において、単球系MDSCのsubsetであるCD14+HLA-DR-細胞は免疫寛容機能を担っており、新たな頭頸部癌治療ターゲットになりうると考えられた。
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