研究概要 |
近年、腫瘍の増殖や転移の分子機構が解明されるに従い、これらに関わる遺伝子をターゲットとした抗体や阻害剤などの分子標的薬が意欲的に開発されている。頭頸部癌においても例外ではなく、既にEGFRに対する抗体薬が欧米において標準治療の選択肢の一つとして認められつつある。しかし、EGFRやVGEFなどは正常な細胞においても発現しているため、今までの化学療法薬とは異なった新たな副作用が次第と明らかとなり、腫瘍に特異的に作用する手法の登場が望まれている。 一方、これまで我々は頭頸部扁平上癌の腫瘍細胞において特異的に高発現しているCOX2をプロモータとした制限増殖型のアデノウイルスベクターによるoncolytic virus therapyによる治療法の開発を行ってきた。このアデノウイルスベクターにEGFRやVEGFに対するsiRNAを組み込むことにより、正常組織に有害な副作用を与えることなく、標的腫瘍細胞のFGFRやVEGFの発現を押さえ込むことを狙った新たな治療法の開発を目的に本研究を計画した。 平成22年度は、この制限増殖型アデノウイルスベクターを用いた実験に対して「遺伝子組換え生物等の第二種使用等をする間に執る拡散防止措置の確認」について、文部科学大臣に承認を得ることができ、アデノウイルスベクターに組み込むためのsiRNAの配列を決定するために,EGFRとVEGFに対して遺伝子発現の抑制効果が確認されている既知のEGFRとVGEFのsiRNA配列を数種類ずつ候補として選び出し、発現ベクターに組み込んだ。現在、培養細胞を用いて、その発現と効果を確認しているところである。
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