吃音の神経基盤が、発語のエラーに対するモニタリング障害により、発語訂正の問題が生じるとするエラー訂正障害仮説を提案する。この作業仮説を検証するために、吃音時の脳波記録を試みた。 発話の開始時点を決めるためマイク入力からトリガーを出力する装置を制作し、128ch脳波計の記録に入力した。これにより脳波記録中の発話時点の同定が可能となった。被検者の前にモニタを置き、小学校低学年で学習する熟語のよみがな3文字150種類を提示した。1単語1.5秒提示した。被検者には提示した文字が消えるまでの1.5秒間に発語が終了するよう指示した。吃音と正常発話の区別は検者が発語を聴取しマウスを用いてオンラインで判断して入力した。 吃音の被検者1名で計測を行ったところ、視覚刺激提示後約500msで中心部を最大とする陰性電位が観察され、エラー関連陰性電位である可能性が示された。しかし本実験で吃音の頻度が15回程度と少なく反応の同定が十分ではなかった。これは課題がやや易しかったことや時間内に発話が終了しなくても、そのフィードバックがないことで、吃音が十分誘発できる条件でなかったことが考えられた。これを踏まえてより安定して吃音を計測するため刺激文字を5文字にするといった工夫や、刺激提示時間の調整、時間内に発話が終了しなかった時にモニタにアラートを提示するなどの手法を開発継続している。また発話開始時刻をトリガーとして逆行性に加算して反応を検討する。またこれに関連して発話開始時刻をより正確に評価するためマイクで発話を記録するだけでなくビデオや筋電図の同時記録も検討する。
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