研究概要 |
耳は3つのparts,外耳・中耳・内耳にわけられ、外側1/3の軟骨部と,内側2/3の骨部(深部)からなる。外耳道の皮膚は常に新陳代謝を繰り返しており、自浄作用によってごみや耳垢を奥の方から、ベルトコンベアー式に外耳道の入り口へと排出されるように出来ており、その生理的機能からも他の皮膚とは異なった性質を有する特殊な皮膚と言える。臨床の場において外耳道皮膚が必要となる疾患には、先天性外耳道閉鎖症、後天性外耳道閉鎖症(外耳道深部繊維性閉鎖症)、外耳道真珠腫、鼓室形成術後の浅在化鼓膜などがある。また耳科手術の際、外耳道の皮膚が欠損する場面には少なからず遭遇する。一度骨面が露出すると外耳道の皮膚が再生するには時間がかかり、他部位の皮膚を移植するも、本来の外耳道皮膚としての機能は損なわれていることが多い。これらの問題点を解決するために、特殊な細胞培養皿を用いて外耳道皮膚細胞シートを作製し、この細胞シートにより、正常な外耳道皮膚機能を損なうことなく外耳道の再生を試みるのが今回の研究目的である。まずラットの骨部、軟骨部の外耳道皮膚を摘出した。ディスパーゼで処理することにより、表皮と真皮を分離しそれぞれを培養した。表皮由来の培養系では、多角形の細胞が相互に密に接着し敷石状に配列し、形態学的に上皮細胞由来の模様を呈した。免疫染色ではpan-cytokeratin陽性であり、外耳道表皮由来の表皮細胞培養に成功した。また真皮由来の培養系では、細胞は紡錘形をして、密度の低い時にはバラバラに存在し、密度が高くなると互いに接着して流れ模様を呈した。免疫染色ではvimentin陽性であり、外耳道真皮由来の線維芽細胞の培養に成功した。これらの細胞は温度応答性培養皿を用いて培養され、低温処理(少量のトリプシン併用)することにより、シート状に細胞を回収することが可能であった。今後はこれらの細胞シートの移植実験を行う予定である。
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