研究概要 |
外来病原体に対する生体防御の最前線に位置する鼻粘膜・口腔咽頭粘膜は,自然免疫,獲得免疫において重要な役割を担っている.なかでもヒト鼻粘膜上皮は,解剖学的に防御機構としての発達したタイト結合による上皮バリアを有していることが知られている.近年タイト結合は前述の防御・バリアとしての機能に加え,免疫応答の第一歩である抗原取り込み機構にかかわっていることが示されており,我々は,以前アレルギー性鼻炎において,抗原提示細胞であるCDllc陽性樹状細胞が上皮と同様のタイト結合分子を発現し内腔に樹状突起を伸ばしていることを報告した. 本研究では,咽頭扁桃のM細胞を指標にして,鼻粘膜組織および培養鼻粘膜上皮細胞を用いて,鼻粘膜上皮のM細胞の同定,分離および分化誘導を行い,鼻粘膜上皮のM細胞の特異的タイト結合蛋白の発現を検索し,ヒト鼻粘膜上皮における抗原提示機構(M細胞,樹状細胞)と上皮のバリア機能との関係を明らかにすることを目的としてきた. 我々はcytokeratin 20 (Ck20)をマーカーにし透過型電子顕微鏡を用いてヒト咽頭扁桃(adenoid)組織を観察すると,短い微絨毛をもったM細胞様の細胞内にCk20で標識された金粒子が同定され,さらにポケット様構造の内部にはリンパ球を取り込んでいる像が確認された.また,ヒト咽頭扁桃組織および培養細胞におけるCk20陽性細胞は,周囲の上皮同様,特定のタイト結合蛋白を細胞境界領域に発現していることを観察した,これらのヒト咽頭扁桃のCk20陽性のM細胞を指標にして,今後ヒト鼻粘膜組織および培養鼻粘膜上皮細胞を用いて,TSLPおよびPPAR-γリガンドなどによるタイト結合のバリア機能調節をターゲットとして,樹状細胞の抗原提示と上皮のバリア機能との関係も踏まえて,アレルギー性鼻炎の新しい治療のための基礎研究を行う予定である.
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