新種細菌アロイオコッカスは、小児中耳炎において高頻度に検出されることが判明している。しかしながら、本細菌が病原菌として中耳炎め病態形成に関与しているのか否かについては明らかになってはいない。我々は、本細菌の病原性についての理解をより深めるために、臨床症例の解析、ならびに免疫学的手法を用いての本細菌に対ずる免疫応答に関する研究を行つた。 本細菌は、他の中耳起炎菌と同様に、各種の炎症性サイトカインやケモカインなどを誘導することが明らかとなり、またさらに患者め中耳検体中に本細菌に対する抗体が産生誘導されていることが示された。 また、患者抗体によって認識される複数の抗原を解析した結果、抗原のひとつは数種類の糖の反復構造からなるポリサッカライドであることが判明し、その糖鎖構造を同定した。また他の抗原についても現在解析中である。 以上の結果はいずれも論文投稿中である。 今回の研究により、アロイオコッカスの中耳炎症病態における重要性ならびに生体内での本細菌に対する宿主免疫応答が解明されつつあり、今後はこれらの結果を踏まえて本細菌に対するワクチン開発や診断技術、治療技術の進歩への基盤作りを行いたいと考えている。
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