研究概要 |
上皮間葉転換(epithelial-mesenchymal transition; EMT)は,上皮細胞が間葉系様細胞に形態変化する現象であり,発生や器官形成過程での重要性が明らかになっている.一方,EMTの獲得が運動性の亢進や細胞外基質の蓄積をもたらすことから,癌細胞の浸潤・転移に関連することがわかってきた.EMT誘導に伴い,Claudinをはじめとするタイト結合分子の変化により細胞間接着力が低下し,癌細胞は運動性を得る.本研究の最終目標は,ウイルス関連腫瘍である上中咽頭癌の浸潤転移におけるウイルス感染のEMTへの関与を解明し,癌の進行を抑制する新しい治療につなげる基礎的知見を得ることである.中咽頭癌の検討では,正常中咽頭組織と比較し,免疫組織染色,RT-PCRにてclaudin-1, -4, -7およびtricellulinの発現低下が認められた(発表済).In situ hybridizationによる検討では,当科の中咽頭癌例のHPV感染は36%に陽性であったが,タイト結合の発現変化と有意な相関は認められなかった.現在,上咽頭癌組織におけるタイト結合の発現変化をしらべている.また,上中咽頭癌におけるウイルス感染とE-cadherin, Snail, MMPなどの因子との関連を検討中であると同時に,in vitroの系での検討をすすめている.
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