1、対象となる聴覚障害児の診断、検査 聴覚障害を疑われ当科外来を受診した新生児・乳幼児患者は平成21年4月から現在まで64名であった。うち聴性行動反応検査と条件詮索反射聴力検査、聴性脳幹反応検査と聴性定常状態誘発反応検査にて難聴が疑われ、先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染を確認する目的に両親に同意を得た上で臍帯の提供を受けた患者は7名であった。発達に関して新版K式やS-S法を用いて評価を行った。 2、CMV感染の臨床検査 今年度乾燥臍帯中のCMVのDNAの検出をreal-time (Nested) PCRで定量的に行った患者は7名であるが、先天性CMV感染が診断された患者は現時点で0名であった。 小児科にて尿検査にて先天性CMV感染が判明し、その後難聴が進行した患者が1名認められた。経口の抗ウイルス薬の治療を施行し聴覚障害の改善を認めた。 先天性CMV感染症の診断がされたものの聴性脳幹反応検査と聴性定常状態誘発反応検査にて難聴が認められず小児科とともに慎重に経過をみている患者が1名である。 3、今後の研究予定 今後、先天性CMV感染が原因である難聴患者の診察を引き続き行うとともに、これまでに先天性CMV感染が判明している患者の聴力検査と発達検査を行うことで聴覚障害の重症度との関係、ウイルス量と聴覚障害の重症度や予後との関係を明らかにする。 また、これまでに先天性CMV感染による聴覚障害に対して人工内耳手術を施行した患者は5名である。これらの聴覚・言語発達についても評価を行い、人工内耳の効果についても解析する。
|