研究概要 |
破骨細胞数が減少しているマウス(RANKL KO,Fos KOマウス;KOはノックアウトマウス)における耳小骨の病態について実験を行った。いずれのノックアウトマウスも難聴と耳小骨形態に異常(骨の長径が太くなる)を呈していた。 形態異常の理由として、耳小骨内に軟骨が増加していることがわかった。耳小骨の発生・成長が軟骨内骨化という形式をとるが、破骨細胞が存在しないと軟骨細胞が吸収されないため耳小骨を含む側頭骨全体において軟骨が増加し形態が異常を来すと考えられる。これは形態学的手法以外にSPring8と呼ばれる特殊な放射線検査によっても解析ができた。 また、耳小骨による難聴(伝音難聴)であるかどうかを調べるために、従来の聴力測定法であるABRと呼ばれる脳波測定では不十分であったため、laser dopplerを世界で初めてノックアウトマウスを用いて行ったところ、耳小骨の可動性が低下していることをつきとめた。今後、骨に異常のあるマウスを中心に中耳の影響を測定するための新しい手法として確立した。破骨細胞が減少してしまう疾患として臨床例では大理石病と呼ばれる疾患において難聴が問題になるが、ノックアウトマウスの研究により難聴の原因を解明することができた。 なお上記の結果はamerican journal of pahologyに投稿し、査読中である。 これまで耳小骨と破骨細胞に関する一連の研究結果から、当該年度の目的であった破骨細胞が増加しても減少しても耳小骨を中心に難聴が生じることが解明がかなり進行しており、耳小骨における骨学においてreviewをまとめる予定である。
|