音は外耳道、鼓膜を介して中耳に入り振動を伝える。中耳にはツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨の3つの耳小骨があり、これらの耳小骨の振動が聴覚には重要である。 本年度の研究では、耳小骨における破骨細胞数の重要性を調べた。側頭骨に破骨細胞数が正常よりも増加したマウス(骨粗鬆症マウス、opgノックアウトマウス)ではアブミ骨と内耳骨包との癒着し難聴をきたす耳硬化症モデルになることがわかった。したがって、骨粗鬆症薬を用いて破骨細胞数が増加しないよう予防することで難聴の悪化を予防できることが明らかになった。一方、破骨細胞数が減少した大理石病モデルマウス(FosあるいはRANKLノックアウトマウス)をmicroCT上で解析した。3つの耳小骨とも太くなり、中耳骨壁が肥厚し容積が小さくなった結果、耳小骨が中耳腔壁に接触したため、耳小骨の振動が制限される可能性が生じるため、難聴になると考えられた。原因と考えられた。これらの治験から破骨細胞数が増加しても減少しても耳小骨や中耳腔の形態は異常をきたし、難聴を呈することがわかった。本研究の意義は中耳疾患のメカニズムや耳小骨における骨吸収の生理的意義について解明することができた。これらの所見をまとめた総論を英文で記載する予定である。本研究の新しい成果は、耳小骨の破骨細胞数が減少すると軟骨が増加したことを見出したことである。耳小骨は軟骨内骨化して発生するが、破骨細胞がなくなると軟骨細胞も消失せず、骨化が進行しないことが推測される。耳小骨の骨化に関するメカニズムは未解明であり、今後にむけた新しい課題と考えられる。耳小骨奇形のメカニズムの解明になりうる課題である。
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