本研究では蝸牛線維細胞を標的とした骨髄間葉系幹細胞移植の効果的な細胞導入法を開発するため以下の実験を行い、成果が得られている。 移植用幹細胞の樹立 成育医療センター研究所生殖医療研究部との共同研究により移植用骨髄間葉系幹細胞(MSC)を得た。まずC57BL/6マウス由来H1/A骨髄間葉系幹細胞株にEGFP遺伝子(緑色蛍光)をレトロウイルスにて発現させ、安定的に強度な蛍光を発する細胞を選抜クローニングした。さらにH1/Aより遠赤色光を発するHcRed発現細胞も同様の方法にて作成し二種類の移植用細胞を樹立した。 幹細胞の経半規管移植 後半規管および外側半規管に小孔をあけ、後半規管より2x10^5cellsを還流し、小孔の修復のためにMSCの無接着培養により作成した細胞塊(cell sphere)を小孔部に挿入することにより術後のリンパ液の漏出を抑えた。同方法により挿入された移植細胞塊は術後2週間においても半規管組織内において維持、さらには進展していることが確認されている。 移植細胞の検出 経半規管移植後の組織を抗GFP抗体での免疫蛍光染色により移植細胞の組織進入を解析したところ、前庭線維細胞組織内、蝸牛ラセン板縁組織内に移植細胞の生着を確認した。移植後の聴力を術後8週間までモニタリングしたが、手術による聴力低下は正常動物でも難聴モデルにおいても見られなかった。現在、細胞導入効率を向上させるためにRho活性化剤で細胞運動・浸潤を高めることが知られるLPA (Lysophosphatidic acid)を幹細胞と同時投与を行い、現在解析を行っている。
|