研究概要 |
昨今、cochlinのアイソフォーム(p40,p44,p63,CTP)の一つであるCTP(cochlin tomo-protein)は、内耳に特異的に発現していることから、外リンパ瘻の診断マーカーとして有用視されている。しかし機能を含めたその詳細についてはほとんど分かっていない。われわれは、内耳の未熟な時期から、成熟する過程における外リンパにおけるCTPの発現パターンを解析する予定で研究を行った。CTPの発現パターンが良く知られているのはヒトであるが、胎生期の外リンパをサンプルとしなければならなくなるため困難である。このため実験動物として我々が普段から用いているラットを使用した。平成22年度は、生後ラット内耳発達過程におけるCTPの発現パターンの推移を確認する目的で、ウェスタンブロットの手法を用いた解析を行なった。その結果、外リンパにおけるCTPの発現パターンはラットの生後初期に最も多く発現を認め、内耳の成熟につれて減少することが明らかになった。この結果は従来分かっていたcochlinの他のアイソフォーム(主にp40)の発現パターンと全く異なっていることから極めて興味深い結果であった。但し今までcochlinの発現の確認に使用したサンプルが内耳組織であったものに対し、本研究ではCTPの確認に外リンパを使用していることから、内耳組織におけるCTPの発現や逆に外リンパにおけるp40を始めとした他のccchlinアイソフォームの発現パターンの解析が必要と考えられるので、これを23年度以降の検討課題としたい。
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