スギ花粉症は、国民の25%以上が罹患していると推測される疾患であり、さらなる増加が懸念されている。特に若年層では、スギ花粉特異的IgE抗体の保有率が増加傾向にあり、抗原特異的IgEの産生をコントロールすることが、花粉症の罹患率低下につながると考えられる。が、抗原特異的IgEの産生機構の詳細は未だ明らかではない。本研究課題では、動物モデルを用い、スギ花粉の鼻粘膜曝露後の抗原応答部位を検索するとともに、抗原認識機構およびB細胞から形質細胞への成熟過程を細胞および分子レベルで検討する。 平成21年度、抗原特異的IgEが産生される前に、抗原非特異的IgEが産生されること、鼻粘膜下に投与されたスギ花粉に対する所属リンパ節が顎下リンパ節であることなどを明らかにした。これらの成果に基づき、平成22年度、以下の結果を得た。(1)BALB/cマウスの鼻粘膜下にスギ花粉抗原を投与後、経時的に顎下リンパ節細胞を採取し、6日間培養して、培養液中の非特異的IgE量を定量したところ、スギ花粉投与後5~10日後に非特異的IgEが産生された。(2)スギ花粉投与10日後の顎下リンパ節細胞を、Percoll密度勾配遠心法により、マクロファージ分画、リンパ球分画、顆粒球分画への分離に成功した。(3)驚いたことに、リンパ球分画だけでは非特異的IgEは産生されず、勿論、マクロファージ分画だけでも非特異的IgEは産生されなかったが、両者の共存によって非特異的IgEが産生されることが判明した。 以上の結果より、スギ花粉への応答部位(顎下リンパ節)で、非特異的IgE産生に関与する細胞が明らかになった。
|