ヒト網膜色素上皮細胞による制御性T細胞の誘導、樹立に関する研究を行った。市販されているARPE19細胞株の培養上清を使用し、健常人末梢血由来のT細胞と共生培養することにより制御性T細胞と能力が示されるか実験を行った。その結果、すでにマウスの細胞で確認されているのと同様に活性化T細胞に対してのみならず、またB細胞株や単球株などさまざまな炎症細胞に対して公汎かつ強力に細胞増殖抑制能があることがわかった。さらに、ヒト網膜色素上皮細胞から誘導、樹立される制御性T細胞のphenotype解析をすすめ、CD4陽性CD25陽性のT細胞が強力な細胞増殖抑制ならびに活性化したTh1細胞に対する炎症性サイトカインの分泌抑制を導くこともわかった。このように網膜色素上皮細胞から樹立、誘導される制御性T細胞はぶどう膜炎などの眼炎症を制御する可能性を持つと考えられるが、さらに優れた点として培養上清だけを用いるためにアロの細胞の混入を避けることができることである。実際に眼局所では誘導されて自律的に眼炎症を制御していると考えられる制御性T細胞ときわめて類似した性質を有すると考えられ、将来的に難治性の疾患への細胞治療につながる成果と考えられる。これらの一定の研究結果についてまとめて報告することが可能と考えられたため、Human retinal pigment epithelium-inducded CD4+CD25+regulatory T cells suppress activation of intraocular effector T cellsのタイトルで英文雑誌に投稿中である。
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