平成21年度は、毛様体扁平部の網膜神経幹細胞の眼内分布を、その分裂が亢進している、rd1網膜変性マウスを用いて解析した。このモデルは、網膜の杆体視細胞特異的な遺伝子であるPde6Bに変異がある。そのため、生後1か月以内に急激な杆体視細胞の変性が起こるが、原因不明の2次的な要因で錐体視細胞も少し遅れて死ぬ。前回の報告で我々は、毛様体扁平部において再生する神経細胞の多くは視細胞の特徴を有する細胞に分化することを突き止めている。そのことより、視細胞の変性速度あるいは残存視細胞の数の網膜内の部位による差と視細胞の再生・新生速度の毛様体内の部位による差に何らかの関連があると推測した。 我々は、生後30日から120日のrd1を対象に毛様体扁平部と網膜内のrhodopsin陽性細胞の数を解析した。その結果、生後30日では毛様体扁平部における細胞数は背側に比べて腹側で有意に増加していることが分かった。一方、鼻側と耳側の細胞数に有意差はなかった。しかし、網膜内の残存杆体視細胞は数が非常に多かったため、定量が困難であった。生後60日のrd1マウスの毛様体の解析でも同様な結果であったが、その差は拡大していた。しかし、60日齢のrd1マウスでは、腹側に比べて背側の網膜でrhodopsin陽性細胞が多く残っていた。一方、鼻側と耳側の細胞数に差はなかった。生後120日のマウスにおいては毛様体扁平部にrhodopsin陽性細胞は見られず、また網膜内にもわずかに残っているのみであった。したがって、背側、腹側、鼻側、耳側に毛様体、網膜ともに差はなかった。
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