当初甲請したH22年度の計画では、(1)酸素が、網膜培養甲に、網膜神経幹細胞の分化へ与える影響の検討、(2)血管の延伸を促進する分子が網膜神経幹細胞の分化へ与える影響の検討、(3)血管の延伸を促進する分子が網膜神経幹細胞の分化へ与える影響の検討を行う予定であった。しかし、ips細胞を用いた網膜再生研究の急速な進展により、毛様体扁平部の網膜幹細胞の研究である本研究を計画どおり続行する意義が薄れた。 そこで、H22年度は、(3)の検討項目に関連して、正常な網膜の発生を制御する因子について調べた。具体的には、網膜神経・血管の発達に影響を与えうる分子として、ヘパラン硫酸を始めとしたグリコサミノグリカンに着目した。まず、生後15日齢のマウス眼内液を検体としてヘパラン硫酸のコアタンパクを検出する抗体でウェスタンブロトを行った。その結果、様々な種類の可溶性ヘパラン硫酸が分泌されていることが明らかになった。さらに、眼内液中のヘパラン硫酸糖鎖濃度の変化を様々な日齢のマウスを用いて測定したその結果、眼内液中のヘパラン硫酸濃度は、器官形成期の比較的若いマウスでは高く、逆に成体マウスでは低下することがわかった。次に、眼内液、血漿や尿を検体としてヘパラン硫酸濃度を比較した。眼内液では、他の体液に比べてヘパリン硫酸濃度が非常に高かった。さらに、in vitroでVEGF、CCL2とプレート表面にコーティングしたヘパリン及びVEGFR1、VEGFR2、CCR2の結合に対する可溶性ヘパラン硫酸、眼内液の作用を検討した。ヘパラン硫酸、眼内液はともにVEGFとVEGFR2の結合を阻害した。一方VEGFとVEGFR1の結合に対しては影響を及ぼさなかった。また、ヘパラン硫酸、眼内液はともにCCL2とCCR2の結合を阻害した。
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