ドルーゼンの構成成分であるアミロイドβの負荷により網膜色素上皮(RPE)での血管内皮増殖因子(VEGF)産生が増加することが報告されている。平成21年度はin vitroにおいて、このVEGF産生増加への小胞体ストレスの関与の有無と、小胞体ストレスを抑制する4-フェニル酪酸(PBA)によりVEGF産生の抑制が可能であるかを検討した。最初にヒトRPE由来の培養細胞であるARPE-19を培養し、アミロイドβを加えた培養液に交換して24時間培養したものと、4-フェニル酪酸(PBA)を添加した培養液で14時間培養したのちに、アミロイドβを負荷したものの細胞と培養液を回収した。ELISA法にて培養液中のVEGF濃度を測定し、ウェスタンブロット法にて細胞ライセート中の小胞体ストレスマーカーであるGRP78/Bip、caspase12、コントロールとしてのGAPDHを検出した。ウェスタンブロッティングのバンドはスキャナでコンピュータに取り込み、SCION ImageによりGRP78/Bip、caspase12、GAPDHの相対値を計算した。結果であるが、アミロイドβ負荷により、コントロールと比較してVEGF、GRP78/Bip、caspase12の濃度は上昇しており、PBAの添加によりこれらは低下していた。なお、GRP78/Bip、caspase12の結果はGAPDHの結果で補正している。これらのことより、RPEへのアミロイドβ負荷によるVEGF産生の増加には、小胞体ストレスが関与していると考えられ、また、小胞体ストレスを抑制する薬剤によりRPEでのVEGF産生の抑制が可能であったから、小胞体ストレスを標的とした薬剤は加齢黄斑変性の予防に有用である可能性があると考えられた。現在、in vivoでの検討を開始しているところである。
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