研究課題
網膜電図(ERG)を利用したマウス網膜神経節細胞応答の記録法の開発ということで、平成21年度は今まで主にヒトのERGで報告されてきた網膜神経節細胞の評価法をマウスに応用して実験を行った。はじめにSTR (Scotopic threshold response)と呼ばれる、暗順応下に弱い光刺激により生ずる反応により、網膜神経節細胞の機能を解析できるか、またどのような条件が最も適しているかを検討した。まず記録に際し完全な暗順応の状態が非常に大切であり、完全な暗室を用いなければ質的な評価をすることはできなかった。刺激強度としては、我々の施設では、-7.2 log cd s m^2から-4.2 log cd s m^2の刺激強度で記録できた。振幅は-5.2 log cd s m^2の刺激で21.6+8.6(mean+SD)μVであった。網膜神経節細胞障害のポジティブコントロールである視神経切断モデルを使った評価でも、切断モデルでは7.3+1.6(mean+SD)μVとSTRが有位に減弱した。この結果よりSTRは視神経の評価に有用であることがわかった。つぎにPhNR (Photopic negative response)と呼ばれる錐体ERGの一成分の中に網膜神経節細胞の成分が含まれるかどうかを検討した。ヒトのPhNRは錐体ERGを青色の背景光下に赤色刺激にて記録をすると網膜神経節細胞反応が記録しやすいとの報告があり、我々も赤色刺激にて錐体ERGを記録しPhNRの評価を行った。視神経切断モデルにおいてPhNRの振幅は対象群と比較して有意な差は認められなかった。以上よりヒト臨床で用いられているPhNRは、マウス網膜神経節細胞の評価法としては機能しないことが判明した。今年度はマウス網膜神経節細胞の評価法の検証を行い、STRによる記録は有用であることが判明した。平成22年度はさらなる評価法の検証と、実際のモデルマウスの評価を行う予定である。
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