研究概要 |
網膜色素変性の治療研究は多方面から進行中であるが、治療に対する評価基準は確立されていない。本研究の目的は、補償光学を適用した走査レーザー検眼鏡(AO-SLO)を用いて網膜色素変性に対して細胞レベルでの詳細な病態解析を行い、長期予後を診断するプログラムや治療の評価基準を確立することにある。AO-SLOでは眼球光学系全体の収差を補正する補償光学システムが加わり、生体眼で非侵襲的に視細胞を観察することができ、網膜色素変性の病態解析・治療評価基準の確立に応用可能である。 (1) 健常眼におけるAO-SLOの撮影 まず健常眼における黄斑部視細胞の細胞密度、細胞形態に関するデータの蓄積を行った。対象者は20-80歳の健常者(眼科疾患、脳疾患、神経疾患、血液疾患、糖尿病、高血圧の既往歴をもたないもの)とした。京大病院スタッフおよび株式会社ニデック・株式会社浜松ホトニクスよりボランティア募集を行い、のべ50名の撮影を行った。正常眼においては規則性のある視細胞モザイク構造が得られ、中心窩から離れるほど視細胞密度が低下することを示した(Ooto et al. Ophthalmology, IN PRESS)。 (2) 網膜色素変性患者眼におけるAO-SLOの撮影 網膜色素変性患者眼における黄斑部視細胞の細胞密度、細胞形態に関するデータを蓄積している。現在までに40名程度撮影の撮影を行った。経時的変化を観察するため、6ヶ月に一度検査を行っている。一般的眼科検査(視力、眼圧、視野、細隙灯、眼底)のほか眼底写真・SD-OCT・眼底視野計(MP-1)・視野検査も並行して施行している。 (3) 視細胞の形態と機能の相関に関する検討 AO-SLOで得られた健常眼および網膜色素変性患者眼における黄斑部視細胞の細胞密度、細胞形態と、SD-OCTにより得られた黄斑部網膜の3次元立体構造(全網膜厚・外顆粒層厚・視細胞外節厚)との相関を検討したところ、網膜厚と視細胞密度が正の相関を示した。また眼底視野計(MP-1)により得られる眼底像に重ね合わせた網膜感度マップと視細胞形態・密度との相関を検討したところ、網膜感度と視細胞密度も正の相関を示した(投稿準備中)。これらのデータから形態機能相関解析ソフトを作成中である。
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