今回はラットの上強膜静脈3本を焼灼した。既報では結膜を切開して上強膜静脈を分離して焼灼すると報告されているが、実際自験例では直接焼灼をすると高率に強膜穿孔を生じた。ブレードを用いて上強膜静脈を強膜から持ち上げて焼灼すると穿孔しないが、両手を用いる手技のため制御糸の設置が必要となり、制御糸設置時に房水の漏出を生じて眼圧が下降すること、静脈単離時に高率に静脈損傷、出血を伴うことが欠点であった。手術用マイクロスコープを用いれば、結膜上から上強膜静脈の視認が可能なため、結膜上から焼灼した。9匹9眼にたいして施行したが、処置前平均眼圧が10.3士1.5mmHgに対して、処置後(1週後)眼圧は10.0±2.3mmHgと、有意な眼圧上昇をもたらさなかった。しかし、1眼ずつを見れば、眼圧上昇を来したものもあった(最も大きいもので処置後の処置眼の眼圧が144mmHgに対して対側の対照眼の眼圧が10.2mmHg)。他の眼圧上昇モデルとして、隅角の光凝固モデルも検討した。処置前平均眼圧が9.7mmHgに対して処置1週後後が12.5mmHg(n=3)であったが、すべての眼で合併症(出血もしくは角膜混濁)を伴っていた。また、ステロイド誘発性の眼圧上昇を検討するため、トリアムシノロン硝子体内注入も行ったが、注入前平均眼圧が8.6mmHgに対して、注入1週後眼圧は9.1mmHg(n=6)と有意な上昇を認めず、各個体のレベルでも十分な眼圧上昇を来した個体はなかった。
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