研究概要 |
【研究内容】眼表面における膜型ムチンの発現およびその機能を調べるために、ヒト不死化角膜および結膜上皮細胞をもちいたin virtoの実験を行った。まず、膜型ムチンの眼表面におけるバリア機能を調べるため、コンタクトレンズ保存液中に含まれる成分が眼表面ムチンの発現にどのような影響を及ぼすかを検討した。SV40ヒト不死化角膜上皮細胞をもちいた研究では、ホウ酸を含んだコンタクトレンズ保存液、およびホウ酸そのものが角膜上皮に発現する膜型ムチン(MUC1,MUC4,MUC16)の発現を抑制した。さらにコンタクトレンズ保存液における消毒成分として含まれるPHMBでも膜型ムチンの発現は抑制されることが明らかになった。また別の実験で、ホウ酸は角膜上皮細胞に発現するtight junctionに障害をあたえることが明らかになっており、角膜上皮に緑膿菌を接着させる実験では、ホウ酸を添加して培養した角膜上皮細胞に、緑膿菌が接着しやすいことが明らかになっている。以上のことから、ホウ酸は、角膜上皮細胞において、ムチンとtight junctionの両面からバリア機能を阻害し、感染を起こしやすい原因となっていると推察される。 【意義および重要性】 コンタクトレンズユーザーは我が国に1000万人以上いると言われており、最近では不適切なコンタクトレンズの保存方法から角膜感染症を生じる症例が増加している。このコンタクトレンズ関連角膜感染症は、今後も増加し続けるとおもわれ、その原因と考えられるコンタクトレンズやその保存液と角結膜上皮におけるムチンの関係を調べることは、感染防御の面からも重要であると考える。
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