研究概要 |
眼表面に発現する膜型ムチンには、MUC1, MUC4, MUC16があるが、これらは眼表面のバリア機能に関連している。膜型ムチンの発現が減少すると、眼表面のバリア機能が低下し、臨床的には角膜上皮障害を呈する。我々は、ヒト角結膜培養上皮細胞において、0.1%ローズベンガル液を用いたムチン関連のバリア機能を評価するモデルを確立し、様々な薬剤による影響を検討した。その結果、点眼薬に多く含まれる塩化ベンザルコニウム(BAC)が、濃度依存的に結膜上皮のムチン発現を低下させ、バリア機能を低下させていることが明らかになった。また、BAC含有および非含有の緑内障点眼を用いた検討では、BAC含有点眼の方が非含有点眼にくらべて有意にムチンによるバリア機能が低下していた。さらに、様々なコンタクトレンズ保存液について検討したところ、ホウ酸を含む保存液が有意に角膜上皮のムチン発現を抑制することが明らかになった。 今回の研究の成果は、臨床的に治療に苦慮する薬剤毒性角膜症の病態解明の糸口になると思われ、さらに今後の副作用の少ない点眼薬の開発のヒントになると考えられる。
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