研究概要 |
目的・方法:ぶどう膜強膜流出路におけるプロスタグランジンF2α誘導体の影響を調べるために,強膜線維芽細胞をType Iコラーゲンゲル中で3次元培養し,種々のプロスタグランジンF2α誘導体を添加して時間経過とともにコラーゲンゲルの直径を測定してコラーゲンゲル収縮能を評価したところ,プロスタグランジンF2α誘導体すべてにプロスタグランジンFP受容体を介したコラーゲン収縮作用があった。コラーゲン分解系には関与していなかったことから,コラーゲンゲルを収縮させる機序を解明するために,代表的なプロスタグランジンF2α誘導体であるラタノプロストを用いてその細胞内シグナル伝達系を調べた。 結果:1)mitogen-activated protein kinase (MAPKs)のうちextracellular signal-regulated kinase, (ERK), p38, c-Jun NH2-terminal kinase (JNK)の発現量はラタノプロストの添加により変化しなかったが,ラタノプロストの濃度依存的にリン酸化の増加を認めた。2)focal adhesion kinase (FAK)は,ラタノプロストの濃度依存的にリン酸化の増加を認めた。3)MAPKs, Rho-associated kinaseの阻害薬を添加することによりラタノプロスト存在下での強膜線維芽細胞によるコラーゲンゲルの収縮が抑制された。 結論・考察:プロスタグランジンF2α誘導体すべてにプロスタグランジンFP受容体を介したコラーゲン収縮作用があり,強膜の構造に何らかの影響を及ぼして眼圧下降作用を発揮している可能性が示唆された。その機序の一つとして,MAPKsやRho-asociated kinaseを介したFAKの活性化が関与していることが示唆された。
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