申請者がDuke大学で用いていた定圧灌流型のGrant perfusion system (Ellingsen and Grant. Invest Ophthalmol 1971)を元に、新たに電子天秤を組み込んだモデルを並列して2眼の房水流出量の測定が同時に可能となる装置を構築した。この装置は摘出ブタ眼の前房をボトルからのバッファで灌流し、ボトルの重量変化を計測することで房水流出量を算定する装置で、効果を検証するため既知の房水流出促進薬剤であるROCK阻害剤を用いたところ、コントロールと比較して30-40%の安定した房水流出促進効果を定量できた。したがって、今年度の実験で房水流出量を定量する装置を確立できたと考えられ、今後圧感受性に関わるメカニズムの探索に応用可能となった。また圧感受性に関わる因子を探索するために、線維柱帯細胞の3次元培養における加圧モデルを構築した。具体的には、コラーゲンと培地と細胞を混合した後にpHを変えることでゲル化させる。細胞はコラーゲン培地の中で3次元的に遊走・増殖するが、このコラーゲン培地に重りを乗せることで全体を加圧し、細胞の変化を観察する。骨髄線維芽細胞においては加圧によってアクチン細胞骨格の脱重合化が起こることがわかっているが、線維柱帯細胞においても蛍光標識ファロイディンを用いてアクチンを染色したところ、アクチンの脱重合化がみとめられた。この結果は圧感受性メカニズムの解明に向けて有望な知見であるが、いまだ定量化には至っておらず、今後更なる検討が必要である。
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