平成21年度は遺伝性網膜変性ラットの光刺激に対する基礎的検討を行った。遺伝性網膜変性モデルラットに対する光ストレスは比較的弱照度であっても、網膜変性を進行する方向に作用し機能的異常ないし組織学的異常を来たすことが確認された。その変化は機能異常に関しては正常ラットの一部では可逆性変化であったが、中強照度の光ストレスにおいては不可逆性変化であった。弱照度の光ストレスを遺伝性網膜変性モデルラットに照射すると、網膜保護に関与する因子が網膜において産生され、これが網膜変性に対して変性遅延の方向に働くことが考えられた。しかし以前に行った報告者自身の検討と同様にアポトーシス促進因子の減少やアポトーシス抑制因子の増加は遺伝子レベル・蛋白質レベル、双方においてみられなかった。遺伝性網膜変性と網膜光障害における網膜変性の共通のメカニズムとして、やはり以前の検討と同様にロドプシンリン酸化状態の病的延長説が考えられた。実験的にロドプシンのリン酸化状態を光ストレス後正常網膜と別腫の遺伝性網膜変性モデル網膜においてそれぞれ検討したところ、そのパターンは共通しており、あらためて以前の報告者自身の仮説が裏付けられたと考えられる。すなわちロドプシンのリン酸化が過剰におこり、脱リン酸化が病的に遅延していれば、視細胞内でおこる視覚情報伝達経路の最終段階である、細胞内カルシウムイオン濃度上昇が続き、カルシウムイオン濃度依存性の細胞死に陥るという仮説である。来年度はこの変化に具体的にどの光波長が関連しているかを引き続き分析検討する予定である。
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