平成22年度は青色光除去フィルター下にての遺伝性網膜変性ラットの光ストレスの影響を検討した。遺伝性網膜変性モデルラットに対する光ストレスは青色光除去フィルター下においても、網膜変性を進行する方向に作用し機能的異常ないし組織学的異常を来たすことはフィルター不使用時と同様であることが判明した。障害程度はフィルター不使用時と比較して弱いものであったものの、弱照度照射の正常ラットの一部では可逆性変化であったのみで、中強照度の光ストレスにおいては不可逆性変化であった。アポトーシス促進因子の減少やアポトーシス抑制因子の増加は遺伝子レベル・蛋白質レベル、双方においてみられず、青色光除去フィルター下においても光ストレスで網膜変性の進行がみられた。同じ条件で光ストレスを遺伝性網膜変性モデルラットに与えた。フィルター不使用時と比較して網膜変性の度合いが減弱することが期待されたが、正常対照と同様にアポトーシス促進因子の減少やアポトーシス抑制因子の増加は遺伝子レベル・蛋白質レベル、双方においてみられず、青色光除去フィルター下においても網膜変性の進行がみられた。網膜変性の原因として光ストレスでロドプシンのリン酸化が過剰におこり、脱リン酸化が病的に遅延すれば、視細胞内でおこる視覚情報伝達経路の最終段階である、細胞内カルシウムイオン濃度上昇が続き、カルシウムイオン濃度依存性の細胞死に陥るというメカニズムが考えられた。これは青色光を除去した光ストレスでも同様におこることが今回の検討で判明した。
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