野生型SEMA4Aに報告されている変異(D345H、F350C、R713Q)を導入し、ヒト網膜色素上皮細胞由来細胞株であるARPE-19に過剰発現させ、細胞内局在を観察した。また、光刺激、酸化ストレスおよび小胞体ストレスに対する細胞の変化をウエスタンブロット法および核染色による細胞死の定量で検討した。野生型SEMA4Aを過剰発現させた細胞では主に細胞膜や細胞質に局在が認められ、一部ドット状の凝集体が観察された。一方、SEMA4A(D345H)を過剰発現させた細胞では、ドット状の凝集体が増加しており、さらに、小胞体の分子シャペロンであるGRP78と一部共局在が認められた。また、SEMA4A(D345H)をARPE-19に過剰発現させると、細胞死が惹起され、ツニカマイシンによる小胞体ストレスおよび過酸化水素による酸化ストレスに対して脆弱性を示した。さらに、SEMA4A(D345H、F350C、R713Q)を発現させたARPE-19では光刺激によりGRP78の増加が認められたが、野生型SEMA4Aを過剰発現させた細胞では認められなかった。SEMA4Aの変異は酸化ストレスに対して脆弱性を示し、さらに網膜色素変性症の増悪因子である光刺激により小胞体ストレスを惹起した。SEMA4Aの変異は酸化ストレスのみならず、光によるストレスを小胞体ストレスに変換して、網膜色素変性症を引き起こしている可能性が示唆された。
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