後期緑内障患者の視野障害と自動車事故の関係について調査するため、自治医科大学附属病院にて緑内障患者の臨床データを集積した。2007年9月から2009年10月までに自治医科大学附属病院を受診した後期(ハンフリー視野検査30-2プログラム(HFA30-2)におけるMean deviation(MD)値が両眼ともに-12dB以下)緑内患者29名と、年齢をマッチングした、初期(両眼ともMD値が-6dB以上)・中期(後期群および初期群の選択基準を満たさないもの)緑内障患者を各29名選択し、過去5年間の事故率、運転時間、運転歴を調査した。各病期群29名中、自動車事故の既往があるものは初期群で2名(6.9%)、中期群で0名、後期群で10名(34.5%)と後期群で多かった。運転歴、運転時間では各病期群で差はなかった。次に、自動車事故に関係する視野障害の検出に有効な視野検査方法を調査するため、2007年9月から2010年1月までに受診した後期群35例を対象に、既存のゴールドマン視野検査およびHFA30-2結果から得られた両眼視野(Beeline/HfaFiles ver.5にて作成)を用い、交通事故歴のある群とない群間での視野障害度の比較を行った。ゴールドマン両眼視野検査の結果は事故群と無事故群で差はなかった。HFA30-2両眼視野では事故群、無事故群間で全視野、上半視野、下半視野における感度に差はなかったが、中心視野における感度を比較したところ、中心下方10度内において事故群で有意に感度が悪かった。以上より後期緑内障患者は明らかに初期および中期緑内障患者に比較して自動車事故を起こしやすい状況にあり、特に両眼視野が進行し、特に中心10度下方視野の感度が低下すると自動車事故をより起こしやすいことがわかった。得られた結果により臨床において後期緑内障患者に対し、自動車運転についてより詳細な注意喚起および教育を行う。
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